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【CONNECT #6】Rina Lila&高橋響 コラボ展(2/2)

2022年4月9日(土)から5月31日(火)までの間、エンブレムフロー箱根のギャラリースペースで開催している、アーティストのRina Lilaさんとフラワーサイクリスト(※)の高橋響さんのコラボ展「FLOWER EARTH〜未完成の優しさ〜」。今回はインタビューの後編をお届けする。 前編記事では、二人とエンブレムフロー箱根の出会い、どのようにして今の道を進むことになり、そこからどのように人生が変わったかを教えてもらった。

※フラワーサイクリストとは”Flower”と”UP CYCLING”(環境用語である「アップサイクル」)を組み合わせた造語で、廃棄されてしまうお花(ロスフラワー)をドライフラワーにして、ものづくりの力でアクセサリーや装飾など様々な形にアップサイクルする職を指す。

後編では、「これだ!」と思う道を見つけるためのヒント、展示のサブタイトルでもある「未完成」のとらえかた、二人の展望などに耳を傾けた。

▲高橋響さん(写真左)とRina Lilaさん(写真右)

「これだ」に出会うには行動あるのみ

エンブレム編集部(以下、E):お二人のように「これだ!」というものを見つけたいものの、「どうすれば見つかるだろう」ともやもやしたりしている人もなかにはいると思います。そのような人がもし周りにいたら、どんな言葉をかけますか。

Rina Lila(以下、R):そこに答えがあるかはとりあえず期待せずに、今自分が惹かれること、楽しそうと思うことをまず試してみること。イベントに足を運んでみたり、何かを買ってやってみたりすること。頭で「これ、どうかな」と考えているだけだと、もっと苦しくなっちゃうと思うから。行動することで誰かと出会って「それやりたい」ってなるかもしれへんし。すぐに答えは出なくても、絶対にどこかでつながると思います。無駄な行動とか衝動とかって、あんまりないなって私は感じます。

高橋響(以下、H):首がもげるほど共感(笑)。はじめる何かは小さくてもよくて、「まずはじめてみる」の積み重ねが自分のストーリーになると思います。

あと、意外と答えは過去にあるとも思います。私も子供の頃「お花屋さんになりたい」と思ったり、ファッションデザイナーに憧れて夜な夜なこっそり服の絵を描いたりしていたことがありました。夢中になっていたのには何か理由があるし、今も絶対にそのエッセンスは残っていると思います。だから「なんで好きだったんだろう」と振り返ってみたり、それにまた触れてみたりするのもありなのかなと思います。

未完成な部分を大切にできる空間を作りたい

E今回の展示についてもお話を聞かせてください。イベントがはじまるまでは対面でお会いしたことのなかった二人が一緒に考えたテーマが「FLOWER EARTH〜未完成の優しさ〜」でした。完成形が求められる世の中だからこそ、在廊中にできていく制作途中のいわば「未完成」の絵もしまわずに飾ってしまうという展示の内容には、安心感すらも覚えました。二人は未完成をどのように捉えていますか。

H:私にとって未完成は全くもってマイナスな言葉ではなくて。完璧に向けてバッチリ仕事するのも好きですが、未完成だからこそ生まれる余白とか伸び代、可能性みたいなところもすごく好きなんです。どんな状態でもありのままで受け入れてくれる安心感が「未完成」という言葉にはあると思っています。曖昧な感情とか、あんまり人にはいえない暗い感情もふわっと包んでくれるようなものなのかな。

R:みんながそれぞれのプロセスのなかで成長しているので、むしろ未完成が前提。未完成でいい、完璧にならなくてもいいと思っています。響さんが言うように、未完成をネガティブにとらえるんじゃなくて、未完成でOK(笑)。この展示に関しては、未完成の部分を逆に大切にできる空間になったらいいなと思っています。

E:未完成の見方がなんだか少し変わった気がします。ちなみに普段から制作の際に意識していることはあったりしますか。

R:頭で考えるよりかは、心にあるものをそのまま出すことをすごく意識しています。それと描きたくないときに描かないことも意識しはじめていることかもしれません。

この展示でも、「描きたくなくても描いたほうがいい」という葛藤を抱えたまま最初のうちは絵を描いていたのですが、スッと出ないような苦しい感じで、葛藤が色に出てきたりもしました。

あとから考えるとその葛藤も絵に深みを出すのに必要で、ありのままに出してよかったなと思えるようになりましたが、描きたくないときに描かないことを許してあげることも、今回ここで大事にしたいなと思っています。

H:私は自分のなかに二つのモードがあって。一つは、リクエストに沿ったものをつくるモードです。もう一つは今回のような展示のモードです。そこではRinaちゃんに近いところがあって、「作らなきゃ」で作らない、作りたいときに作ろう、と決めています。

基本的には表現したいものに合わせて、絵を描くようにお花を重ねていますね。ただ、表現したいものが作っていくうちに変わったりもします。この展示でも、最初は天国のような、木漏れ日とか温かさが溢れる空間をイメージしていたんです。だからカラフルな花を多く持ってきたんですけど、来てみたらもっと暗い色もあってよかったな、って。私が思う未完成では、曖昧な部分とか暗い色も許容したいなって思ったんです。

そうやって展示会場に身を置いて作りはじめると変わる部分も出てくるので、あまり決めこまずありのままで、そのとき出したいものをイメージしてつくるようにしています。

▲今回響さんが絶対につくると決めていた、制作途中のお花の地球。

E:そうやってできていった作品を通して伝えたいメッセージについてもお聞きしたいです。

H:今回の展示に関していうと、誰だって生きていると葛藤、しがらみ、辛いことがあるけれど、「この空間にはそれを持ち込まなくていいんだよ」と言葉にせずとも感じてもらえるようなやさしい場所にしたいですね。作品を通して許容することや認めることは、今後も大切にしていきたいことです。

R:今いろんなことが起きているなかで、怒りや悲しさにフォーカスするのではなく、愛情とかやさしさ、調和……気持ちのいいほうに少しでもフォーカスできる時間が増えたらなと思います。何にフォーカスするかは選べることだから、私の絵を見て気持ちが軽くなったり、明るくなったりしたらすごくうれしいです。

E:エンブレムでは、実は宿泊者がアートや作家さんとつながれるような場を提供したいという思いから、このギャラリースペースをはじめました。展示期間中で、お二人がつながりを感じた瞬間がもしあれば、聞かせてください。

H:私が最初にここに泊まったとき、レストランスペースの絵がRinaちゃんのものだとは知らずに、ただ絵がすごく好きで写真を撮っていたんです。今回の展示で「Rinaちゃんとのコラボ展はどう?」といわれたときに「あの絵の人だ!」というつながりは大きかったです(笑)。

ただ、展示がはじまってからも声をかけてくれる宿泊者がいたり、興味を持って見てくれたりする方が多いなと思いました。エンブレムに集まる人はやさしい方が多いように感じます。

R:オープンな感じがする。「がんばってね〜」とか、「ずっと描いてるの?」とか話しかけてくれたり。それはすごくうれしいなぁって。

H:たしかに。なかなかホテルで人と話すとか、フロントの人と話すことってないので、エンブレムにしかない空気感があることは滞在するたびに感じます。

R:私はここで制作するなかで会ったことのないエンブレムの人たちと話すことができて、働いているときとはまた違う形でみんなとつながれたのがすごくうれしいです。エンブレムで働く人たちはみんなオープンな感じがするし、興味を持ってくれるのはすごくうれしい。そのつながりが今のところ、一番大きいかもしれないです。

▲展示期間中に開催されたワークショップの風景。参加者はRinaさんが半分ペイントした瓶に自身でペイントし、ロスフラワーのブーケをいけた。

二人が思い描く2022年

E:最後に今年の二人の展望を聞かせてください。今年はどういう年にして、どんなことをされていきたいと考えていますか。

H:やりたいことはたくさんあります!ひとつはお花とアートを掛け合わせた何かをすることです。前にライブペインターの方とコラボさせていただいたこともあって。今後もいろんな方と少しずつコラボしていきたいですし、Rinaちゃんともまた何かできたらうれしいなと思っています。ただここはプランニングをがっちりせずに、偶発的に起きることに身を委ねていきたいです。

あとは自分のなかにある「持続可能」というキーワードを実現していくことです。去年は「断らずに全部やろう」という気持ちでいましたが、今年に入ってからいただく話の規模が大きくなり、チームを組まないと私がつぶれてしまうと感じることがあったので、これまで自分ひとりでしてきたことをチームで取り組むことにしました。

そこで「Bloom mate(ブルームメイト)」という制作チームを立ち上げて募集をかけたら、本当に多種多様なメンバーが集まってくれて。なので今年の後半にはBloom mateの体制を整えて、しっかりと回していきたいです。余白がないと新しいものも生まれないし、アンテナも鈍るので、去年の経験を踏まえて、今年は心に少し余裕をつくりたいと思っています。

E:Rinaさんはどうでしょう。

R:今年は制作にフォーカスしたいです。でも私だけが描くというよりも、みんなで描くことがしたいとも思っています。この前もワークショップをしたんですけど、私がそこで言葉をかけることで「こんなに絵描くって楽しいんや」「自分をちょっと知れた気がする」って思って描いてくれることが多いように感じたので、そういう時間をみんなに提供したいなと思っています。

あとは自分を受け入れる方法とか、どうやってもっと声を届けられるかは今年も考えていきたいところです。去年も今も発信は大事にしてきた部分だから、それをもっと強くしていきたいなと思います。

Rina Lila(リナ・リーラ)

1996年兵庫県加古川市出身。23歳のとき、ひとり旅で訪れた美術館で「絵を描きたい!」という衝動に駆られ、帰国後から創作活動を開始。アーティスト名の由来は「神々の遊び」「創造の自由の喜び」を意味するサンスクリット語「Lila」から。描き出す絵にはまさに宇宙がダンスするように、創造の喜びや自由が表現されている。

https://www.instagram.com/rina_lila_art/

高橋響

1990年生まれ、岩手県出身。旅するフラワーサイクリストとして、さまざまな理由で廃棄されてしまう花から新たな価値を生み出す活動を展開中。2020年11月には、”2年後の未来が変わるかもしれないお花屋さん”がコンセプトのプロダクトブランド「きらくにフラワー」をはじめる。同屋号ではショップ出店や各種イベントを多数開催。空間や撮影の装花、百貨店でのワークショップ、オーダー作品の制作なども手掛けている。

https://www.instagram.com/hibiki_tripflower/